実際に外国人旅行者がどのように国内を移動するかを述べます。下のデータを見ての通り、仮に鹿児島から外国人を受け入れた場合、彼らは都市部を目指し日本列島を北上します。せっかく安い航空運賃で日本に入国しても彼らが東京まで北上した場合、結果的には多大な交通費と宿泊費を支払うために日本全国に経済的な波及効果が考えられ、国としても損失にはならないはずです。
■2004年都道府県別外国人訪問者数(推計)国土交通省
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上の図からも分かるように鹿児島空港から入国しても直接、福岡を目指す可能性もあります。さらに九州では長崎や大分、また東京に近い静岡などに格安航空会社が就航した場合、グローバル化の波は鹿児島を素通りする可能性も出てきます。
また、現在の日本のビザの発給手続きでは、途上国の人々は悪徳なブローカーを通さなければ入国もままならないといった現状をよく耳にします。その場合、入国した本人も日本に入国した時点で業者の違法行為に巻き込まれてしまい、その後まで違法滞在などに繋がっていくケースです。きちんと本人が日本の大使館でビザを取得し堂々と入国できるようにしなければ、日本国内で結果的に違法行為と見なされるケースが後を絶たない事態を招きます。
グローバル化は国単位ではなく各国の地域を拠点として進む傾向が強く、格安な航空会社が就航していることがその最低条件です。逆にそれだけのことで「ひと」と「金」の流れができるのです。これに海運が加われば「モノ」の流れができます。グローバル化の波は瞬く間に途上国にあった都市を大都会へと変えてしまうほどの巨大なものであり、もしこの波に乗らなければジワジワと世界の前線から忘れ去られとり残されていくのですから、グローバルの波に乗るか、乗らないのかという議論は既にないはずです。その波に乗るだけで様々な地域の展望が開けていくことは海外の各都市がすでに実証しています。先の中国における格安航空会社の拠点もすぐに日本の地方都市を追い抜くでしょう。さらに拠点としての地域の単位で考えれば、現在すでに鹿児島及び南九州は各アジアの拠点都市に比べ経済でさえも大きく追い抜かれてしまっているのですから、今さら「途上国の人々」の来訪を恐れることはありません。むしろ私たちは今のアジアの各都市に私たちをはるかに超えた多くの資産家が誕生している事実に目を向けるべきです。
東京は従来からアジアの拠点として機能していたために、逆に現在の時点では海外のグローバル化を押し止め、国内の大企業を保護する選択もありうる一方、東京以外の地方に於いてはその拠点となるべく努力を続けていかなければ生き残ることができない。私たちが守るべき産業は農業と畜産です(東南アジア各国と事情も似ています)。日本の食料危機が現実となりつつある現在の状況で、これらを今までのように国単位で保護することは難しくないはずです。つまり、私たちはグローバル化に対して東京とは逆の方向に舵をとっていかなければならないのです。かつての薩摩藩がきっかけとなった明治維新以来、地方の優秀な人材は経済の豊かな都市部を目指し、帰っては来ませんでした。「国際化するアジア」の中でもお話ししたように仮に途上国から優秀な人材だけを選りすぐって入国させても地方に留まると考えること自体無理があります。彼らは例え途上国であろうとその国のエリートであることに変わりはないのです。ですから日本政府のおかしな政策は地方にとって意味をなさないし、地方は決して給料の高いエリートを必要としている訳ではない。もし地方がそんなエリートを雇えたならばこれまでもそもそも人材の流出が起こるはずなどないのです。日本本土の中で東京からもっとも離れた鹿児島が東南アジアの重要な拠点に変わったとき、国内の人の流れも変わるでしょう。
日本政府は現在、他国を圧倒する世界一位の軍事力を誇るアメリカ政府とその借金の額で熾烈な競争を演じていて、実際、私も現在どちらの借金が世界一位になっているのかよく分かりません。アメリカ政府の借金と比べた時、日本の借金は一体、何のために築かれ、誰の責任なのかも日本人でさえ答えられないでしょう。さて、2000年頃から老後を税金と物価の安い海外で過ごす方々が増えていて、今でもそれは続いています。この中には日本の民間人も公務員の方もおられました。海外で過ごしている間、彼らは日本国に税金を支払う義務はありません。その一方で彼らの退職後の年金は今後も日本にいる者たちがまかなうより他にないのです。では現在の日本政府の借金は一体誰が返済することになるのでしょうか。マレーシア、タイ、フィリピンなどの政府は積極的にこういった日本の退職者たちを受け入れる政策をとっておりますから老後を海外で過ごされる方は今後も増えるでしょう。その一方で日本で働き日本で税金を支払ってくれる外国人がいてくれたら、今、日本にいる私たちが彼らをどのように扱うべきであるのかという答えが出てきます。これがいわゆるグローバル化に伴う「国民国家の崩壊」という現象です。
グローバル化の波は大変巨大で抗う術がないために必要以上に私たちに警戒心を引き起こしておりますが、これは大局的には世界の「格差」を解消する自然な流れでむしろ積極的に受け入れるべきだとお話しいたしました。先の「外国人観光客」に関しては私たちは今のままでも彼らを受け入れることは難しくありません。しかし、もしその先の国際的な共生・恊働社会に目を向けるならば必ずしも平坦な道ではないようです。私は経済にとっては現在の世界に現存する「格差」をありのままに受け入れるべきだと述べましたが、その一方で「人権」は全ての外国人に守られなければならないと同時に「差別」をすることは許されません。この一見矛盾している課題をどのように解き明かすかは実際に摩擦の過程を経なければならないでしょう。
かつての明治維新は「西洋」に対する開国でありそれに対して私たちのかつての英雄たちは日本に中央集権体制を作り上げました。今回のグローバル化は主に「アジアの途上国」に対してであり、私たちの住む「地域」あるいは個々人が国家を飛び越えてお互いの信頼を確立する一般の我々が主人公となる改革だと位置づけることができます。国家と言う垣根がより低くなったため、これまで以上に地域、あるいは個々人の判断が試されるのです。
この巨大な波の後にどのような世界が訪れるかは私には分かりません。恐らくその答えは今はまだ同じアジアに暮らす皆様の夢の中にしかないのだと思います。ただ、私はこういった大きなうねりの中でASEANを含む新しいアジアの経済圏が既に歩み始めているという確かな実感を持っています。
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